No.232 保育士の労働時間の実態と向き合い方

子どもたちの健やかな成長を支える保育士の仕事は、やりがいに満ちた反面、ハードな勤務実態があるのも事実です。なかでも「労働時間の長さ」や「持ち帰り仕事の存在」は、保育士を目指す人や現職の保育士にとって大きな悩みの種となっています。本記事では、保育士の労働時間の実態をデータや現場の声をもとに整理し、過重労働の背景やその対策について、現実的な視点から詳しく解説します。
「定時で帰れる」は幻想?実際の残業実態

多くの保育士が直面するのが、「定時で帰れない」という現実です。表向きには「残業なし」とされていても、実際は保育終了後に行う事務作業や会議、保護者への連絡、制作物の準備などが業務として存在し、それらを「勤務時間外」で対応しているケースが多く見られます。
ある調査によれば、保育士の約6割が「残業が月20時間を超える」と回答しています。さらに、発表会や運動会などの行事前には、装飾の準備やリハーサル対応などに追われ、実質的な労働時間が大きく増加する傾向があります。こうした実態は、いわゆる「サービス残業」と呼ばれるもので、労働時間にカウントされないまま処理されてしまっている場合も少なくありません。
持ち帰り仕事という“見えない労働”の問題

保育士の仕事には、家庭に持ち帰って行う業務も多く含まれています。たとえば、月案・週案などの保育計画の作成、製作物の準備、クラスだよりの作成などが該当します。これらは本来、勤務時間内に行うべき業務ですが、日中は子どもたちの対応に追われ、落ち着いて作業できる時間が限られているため、結果的に持ち帰って対応せざるを得ないというケースが多いのです。
「勤務時間が終わってからが本番」と感じる保育士もおり、この“見えない労働時間”が心身の疲労感や離職の原因にもつながっています。特に若手の保育士や、新卒で入職した職員にとっては、業務の全体像が見えにくく、常に時間に追われる感覚を抱きがちです。
働き方改革と現場の改善の取り組み
近年は「保育士の働き方改革」が少しずつ進められています。たとえば、ICT化によって連絡帳や保育記録の電子化を進める園が増え、書類業務の効率化が図られています。また、行事の簡素化や定型フォーマットの導入などによって、持ち帰り仕事の削減に取り組む保育園も出てきています。
さらに、業務の一部を補助スタッフや事務職員に分担することで、保育士が本来担うべき「子どもと向き合う時間」に集中できる環境づくりが進んでいます。一部の自治体では、園への補助金制度や人員加配を導入し、労働時間の見直しや職員の待遇改善を後押しする取り組みも始まっています。